直感って案外当たっているのかもしれません。

小学校5年生。
父の仕事の都合で転校を経験した。
転校した先は夜中は月の光しかなく、カエルの合唱がうるさくてなかなか寝付けないような田舎町。
転校初日、緊張しながら黒板の前で自己紹介をする私。
先生が一つ空いた席を指さし私の席はそこだと言う。
席に着き、隣に座る少年に簡単なあいさつをした。
背が小さく、真っ黒に日焼けした少年はにっこり笑って「よろしく」と答えた。
はっきり言って全くかっこよくは無い彼のその笑顔にドキッとしてなんだかずっと心の中に残っていた。
それから1年が過ぎ、私たちは小学校を卒業した。
「笑顔」の彼は私立の中学校に進むことになりそれ以来彼に会うことはなかった。
でも、なんでかずっと彼の「笑顔」が気になり、私の恋愛をするうえでの基準になっていたように感じる。
それから十数年が過ぎ、私も社会人として後輩なんかもできる年齢になっていた(いわゆるアラサー)。
営業の仕事にやりがいを感じ、ガツガツ仕事をしてしまったのが悪かったのかもしれない…。
そのころ、5年付き合った彼氏に好きな人ができて別れた。
はっきり言ってかなりの痛手だった。
彼氏と別れてから数か月が過ぎ、ようやく普通の生活を取り戻したころ、友達から誘われた飲み会に参加した。

男友達を紹介してくれるとのことだったが、はっきり言って(友達には申し訳ないが)無駄な時間だった。
全く興味が持てない。
やっぱり前の彼氏のことを引きずっているのだろうか。
飲み会が終わり終電近くなった電車に乗った。
ガラス窓に映る自分の顔に愕然とする。
疲れ果てた顔。
「私こんなに老けてたっけ?」どんどん自己嫌悪に陥る自分がいた。
「もっと若いころは少しはモテたのに」「無駄な5年間を過ごしてしまった・・」「これから誰とも出会えずずっとひとりかもしれない」…暗いことばかり考える。
重い足取りで駅に下車しトボトボと改札へ向かう。
…とその時、「ちょっと!」と私を呼び止める男性の声が聞こえる。
(なんだろう…危ない人かもしれない…)私は無視して先を急いだ。
「○○だよね?!」間違えなく私の名前を呼んでいる。
ふりむくと一人の男性が立っていた。
そして「あの笑顔」で微笑みながら近づいてくる。
かっちりとスーツを着た長身の男性。
私は彼がだれなのかすぐにわかった…。

今彼は私の隣にいる。
小さな彼のコピーと一緒に。